第150章

田中辰哉は大島莉理をじっと見つめたまま、長い沈黙を保っていた。

その視線の奥に、何かが隠れている気がする。なのに、どうしても読み取れない。――ただ、理由もなく鼓動だけが速くなる。

来なければよかった。そんな後悔が、遅れて胸に差した。

「好きにやればいい」

ようやく田中辰哉が視線を外し、淡々と言う。

「午後は会議がある。今回は傍聴には行かない」

大島莉理はぱちりと瞬きをした。聞きたいことがあったはずなのに、口を開きかけた瞬間、何を聞こうとしていたのかふっと消える。

――目的は、もう果たした? そんな感覚だけが残っていた。

立ち去らずにいると、田中辰哉が目だけで促す。

「他に用...

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